【SAP EWM】LOSC(Layout-Oriented Storage Control)とは?現場での活用例をわかりやすく解説

EWM-LOSC

SAP EWMを学び始めると、LOSC(Layout-Oriented Storage Control)という機能に出会います。

名前だけ聞くと難しそうに感じますが、実は考え方はそれほど複雑ではありません。

例えば、大規模な物流センターでは、入荷した商品をそのまま保管棚へ運ぶのではなく、一度中継エリアやコンベア投入場所を経由してから最終保管場所へ搬送するケースがあります。また、自動倉庫やマテハン設備と連携する現場では、このような「決められた経路を通す仕組み」が欠かせません。

LOSCは、こうした倉庫内の物理的なレイアウトや搬送動線をEWM上で実現するための機能です。

一方で、初めてLOSCを学ぶ方の中には、

  • LOSCは何のために使うのか分からない
  • POSCとの違いがよく分からない
  • 実際のプロジェクトでどのように利用されるのかイメージできない

という方も多いのではないでしょうか。

私自身、EWM案件に携わる中で、LOSCは設定そのものよりも「現場の搬送動線をどうシステムに落とし込むか」が重要だと感じています。実際の物流センターでは、フォークリフトの移動距離や作業エリアの役割分担、マテハン設備との連携など、システムだけでは見えない要素が数多く存在するからです。

この記事では、LOSCの基本的な考え方から、具体的な利用シーン、POSCとの違い、そして実案件でよくある注意点まで、図解を交えながらわかりやすく解説していきます。

EWM初心者の方はもちろん、これから自動倉庫案件やマテハン連携案件に携わる方にも参考になる内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

LOSCとは何か?

LOSCとは、Layout-Oriented Storage Control(レイアウト指向保管制御) の略称です。

SAP EWMにおいて、倉庫内の物理的なレイアウトを考慮しながら搬送経路を制御するための機能です。

この説明だけでは少し分かりづらいので、まずは身近な例で考えてみましょう。

例えば、大型ショッピングモールで買い物をするとします。

目的の店舗へ向かう際、理論上は最短距離で移動できるとしても、実際にはエスカレーターや通路の構造上、決められたルートを通らなければなりません。

物流センターも同じです。

システム上は「入荷エリアから保管棚へ直接移動する」のが最短ルートだったとしても、実際の現場では、

  • 一度中継エリアを経由する
  • コンベア投入場所まで運ぶ
  • 自動倉庫の受け渡し地点へ移動する

といった運用が行われています。

LOSCは、このような現場の搬送ルールをEWM上で表現するための仕組みです。

LOSCを使わない場合

LOSCを設定していない場合、EWMは通常、開始地点から最終目的地まで直接搬送する倉庫タスク(WT)を作成します。

例えば以下のようなケースです。

入荷ステージ
    ↓
保管棚

この場合、作業者は入荷ステージから保管棚まで直接商品を運搬します。

小規模な倉庫であれば、このようなシンプルな運用で問題ありません。

LOSCを使う場合

一方で、大規模物流センターや自動倉庫を利用する現場では、途中の中継地点を経由することがよくあります。

例えば次のようなケースです。

入荷ステージ
    ↓
コンベア投入エリア
    ↓
自動倉庫

この場合、作業者が行うのはコンベア投入エリアまでの搬送です。

その後はコンベアや自動倉庫設備が商品を搬送します。

つまり現場では、

入荷ステージ
↓
コンベア投入エリア

コンベア投入エリア
↓
自動倉庫

という2つの工程に分けて管理したいわけです。

LOSCを利用すると、EWMはこのような中継地点を考慮した搬送経路を自動的に生成できるようになります。

LOSCの本質

LOSCを一言で表現すると、

「商品をどこを通って目的地まで運ぶのかを制御する機能」

です。

ここで重要なのは、LOSCが管理しているのは作業内容ではなく搬送経路であるという点です。

後ほど詳しく説明しますが、

  • LOSC:どこを通るか
  • POSC:何をするか

という違いがあります。

まずはLOSCを「倉庫内のルート案内機能」のようなものだと理解しておくと、全体像がつかみやすいでしょう。

LOSCが必要になる理由

ここまで読んで、

「なぜわざわざ中継地点を作るのだろう?」
「直接運んだ方がシンプルなのでは?」

と思った方もいるかもしれません。

確かに小規模な倉庫であれば、入荷エリアから保管棚まで直接搬送する運用でも問題ありません。

しかし、実際の物流センターでは様々な制約が存在します。

そのため、多くの現場でLOSCが活用されています。

ここでは代表的な利用ケースを見ていきましょう。

理由① 倉庫が広すぎる

近年の物流センターは非常に大型化しています。

数万平方メートル規模の倉庫も珍しくなく、入荷エリアから保管エリアまで数百メートル離れていることもあります。

例えば次のようなレイアウトを考えてみましょう。

入荷エリア
    ↓
搬送エリア
    ↓
保管エリア

この場合、入荷担当者が毎回保管エリアの奥まで商品を運ぶのは非効率です。

そこで、

  • 入荷担当者は搬送エリアまで運ぶ
  • 搬送担当者が保管エリアへ運ぶ

というように役割を分担することがあります。

LOSCを利用すると、このような現場の運用をEWM上で表現できます。

理由② 自動倉庫やマテハン設備と連携するため

EWM案件で最もよく見かけるのがこのパターンです。

例えば自動倉庫(ASRS)を導入している物流センターでは、作業者が直接ラックへ格納するわけではありません。

一般的には、

入荷ステージ
    ↓
コンベア投入地点
    ↓
自動倉庫

という流れになります。

現場作業者はコンベア投入地点まで商品を運びます。

その後はコンベアやクレーンなどの設備が自動で搬送を行います。

このような設備連携では、「どこで人の作業が終わり、どこから設備搬送が始まるのか」を明確に管理する必要があります。

LOSCはその境界を表現するために非常に重要な役割を果たします。

実際のEWMプロジェクトでは、LOSCが登場する場面の多くがマテハン設備との連携案件です。

理由③ 作業責任を明確にするため

物流センターによっては、業務ごとに担当部署や担当者が分かれている場合があります。

例えば、

  • 入荷チーム
  • 搬送チーム
  • 格納チーム

というような体制です。

この場合、商品をどの地点で引き渡したのかを明確にする必要があります。

例えば、

入荷ステージ
    ↓
中継エリア
    ↓
保管棚

という運用であれば、

  • 入荷チームは中継エリアまで運ぶ
  • 格納チームは中継エリアから保管棚へ格納する

という責任分担が可能になります。

もし商品が中継エリアに存在しているのであれば、どのチームの作業待ちなのかも把握しやすくなります。

理由④ 搬送の進捗を可視化するため

LOSCを利用すると、搬送工程を複数の倉庫タスクに分割できます。

そのため、

  • どこまで搬送されたのか
  • どの工程で滞留しているのか
  • どこがボトルネックになっているのか

を把握しやすくなります。

特に自動倉庫やコンベア設備を含む大規模センターでは、進捗管理やトラブル調査の観点からも重要な意味を持ちます。

LOSCは「現場都合」をシステムに反映する機能

ここまで見てきたように、LOSCが必要になる理由はシステム側ではなく現場側にあります。

EWMだけを見れば、

入荷ステージ
↓
保管棚

という単純な搬送で十分です。

しかし実際の物流センターでは、

  • 倉庫が広い
  • 設備を利用する
  • 作業を分担する
  • 進捗を管理したい

といった現実的な事情があります。

LOSCは、そのような現場の運用をシステム上で正しく再現するための機能なのです。

LOSCの仕組み

ここまでで、LOSCが「倉庫内の搬送ルートを制御するための機能」であることは理解できたと思います。

では実際に、EWMの内部ではどのような仕組みで動いているのでしょうか。

設定画面の話に入る前に、まずは全体の流れを理解しておきましょう。

LOSCの基本イメージ

LOSCでは、商品を最終保管場所へ直接搬送するのではなく、あらかじめ定義された中継地点を経由させます。

例えば次のようなケースです。

GR Zone
   ↓
Transfer Area
   ↓
保管棚

この場合、Transfer Area(中継エリア)がLOSCで定義される経由地点になります。

作業者や設備は、このルートに沿って商品を搬送します。

ポイントは、EWMが「どこを経由するか」を事前に理解していることです。

EWM内部では何が起きているのか

LOSCを理解するうえで最も重要なのが、倉庫タスク(WT)の生成方法です。

LOSCを利用しない場合は、通常1つのWTが生成されます。

例えば、

入荷ステージ
↓
保管棚

であれば、

WT1
入荷ステージ → 保管棚

という1つの倉庫タスクになります。

非常にシンプルです。

一方、LOSCを利用する場合はどうでしょうか。

例えば、

入荷ステージ
↓
中継エリア
↓
保管棚

というルートが設定されている場合、EWMは搬送工程を分割します。

WT1
入荷ステージ → 中継エリア

WT2
中継エリア → 保管棚

このように複数のWTとして管理されるのです。

これによって、

  • どこまで搬送されたのか
  • どの工程が完了しているのか
  • どこで滞留しているのか

を細かく管理できるようになります。

LOSCシーケンスとは

LOSCでは、「どの保管タイプからどの保管タイプへ移動する際に、どこを経由させるか」を設定します。

概念的には次のようなイメージです。

開始保管タイプ
      ↓
経由保管タイプ
      ↓
終了保管タイプ

例えば、

GR
↓
CONV
↓
ASRS

という設定を行うと、

GRからASRSへ格納する際には必ずCONV(コンベア投入エリア)を経由するようになります。

つまりEWMは、

「ASRSへ行きたいなら、まずCONVへ運んでください」

というルールを自動的に適用するわけです。

LOSCで重要になる「中継地点」

実案件でLOSCを設計する際、多くの人が意識するのは最終保管場所です。

しかし実際には、中継地点の設計が非常に重要になります。

なぜなら、

  • コンベアの投入場所
  • 自動倉庫の受渡し地点
  • 作業引継ぎエリア
  • 集約エリア

など、現場運用の要となる場所が中継地点として設定されることが多いためです。

特にマテハン設備連携では、

「どこでEWMの責任が終わるのか」
「どこから設備側の責任になるのか」

を明確にするためにも、この中継地点が重要な意味を持ちます。

LOSCを理解するコツ

LOSCを学び始めたばかりの頃は、

「設定項目が多くて難しい」

と感じるかもしれません。

しかし本質的には、

商品を目的地まで直接運ばず、途中のチェックポイントを経由させる仕組み

と考えると分かりやすいでしょう。

実際のプロジェクトでも、

「この商品はどこを経由するべきか?」

という現場目線で考えると、LOSCの設計意図が理解しやすくなります。

設定画面を見る前に、まずは現場の搬送ルートをイメージできるようになることが大切です。

コラム:LOSC設計で本当に重要なのは「現場の流れ」を理解すること

ここで少し、私が過去のプロジェクトで経験したことをお話ししたいと思います。

LOSCを学び始めると、

  • どの保管タイプから
  • どの保管タイプへ
  • どの中継地点を経由するか

という設定方法に意識が向きがちです。

もちろん、マテハン設備側の制約を考慮することは大前提です。

例えば、

  • このコンベアには流せない
  • この搬送ルートは設備上存在しない
  • この受渡し地点を必ず経由しなければならない

といった制約です。

しかし、実際のプロジェクトで私が難しいと感じたのは、そこではありませんでした。

本当に重要なのは、

「どの中継地点を通れば最も効率的なのか」

「どの中継地点を通ると将来的にボトルネックになる可能性があるのか」

を事前に見極めることです。

例えば、物理的には最も近い中継地点があったとします。

一見すると、そのルートを選ぶのが最も効率的に思えます。

しかし、その中継地点のキャパシティが1パレット分しかなかった場合はどうでしょうか。

通常時は問題なくても、繁忙期や大量入荷が発生したタイミングでは、その場所にパレットが集中してしまいます。

すると中継地点で処理しきれなくなり、その手前のコンベアで滞留が発生します。

さらに厄介なのは、そのコンベアを共有している他の搬送ルートまで影響を受けることです。

本来であれば別の搬送先へ向かうはずのパレットまで動かなくなり、倉庫全体のスループットが低下してしまいます。

このような問題は、EWMの設定だけを見ていてもなかなか気付きません。

そのため、プロジェクトではマテハンベンダーと協力しながら、

  • Material Flow(マテリアルフロー)
  • コンベア負荷
  • 中継地点の滞留可能数
  • ピーク時の処理能力

などを確認し、可能であればシミュレーションまで実施することが重要になります。

実は私自身、この観点の検討が十分ではなかったプロジェクトを経験したことがあります。

システム上の設定は正しく、テストでも大きな問題は見つかりませんでした。

しかし稼働後、想定以上の物量が流れた際にマテハン設備の処理能力が追いつかず、期待していたスループットを発揮できなかったのです。

結果として、

  • 本来の搬送先を手動で変更する
  • MFSのモニタを常時監視する
  • WMSのモニタを確認しながら流量を調整する

といった運用対応が必要になりました。

もちろん、システム的には間違っていません。

しかし物流センターにとって重要なのは「正しい設定」ではなく、「求められる処理能力を発揮できること」です。

この経験から私は、LOSCを設計するときには設定画面だけを見るのではなく、

「このルートに大量の荷物が流れたとき、本当に問題なく処理できるか?」

という視点を持つことが非常に大切だと感じています。

EWMコンサルタントにとって、LOSCは単なる設定機能ではありません。

物流現場全体の流れを理解し、それをシステムへ落とし込むための重要な設計要素なのです。

実案件でよくあるLOSCの例

ここまでで、LOSCの基本的な考え方や仕組みについて説明してきました。

ただ、仕組みだけを理解しても、

「実際の物流センターではどのように使われているのかイメージできない」

という方もいるかもしれません。

そこでこのセクションでは、実案件でよく見かけるLOSCの利用パターンを紹介します。

パターン① 入荷から自動倉庫への搬送

おそらく最も代表的なLOSCの利用例です。

入荷ステージ
      ↓
コンベア投入エリア
      ↓
自動倉庫(ASRS)

入荷された商品は、まず作業者やフォークリフトによってコンベア投入エリアまで運ばれます。

その後はコンベアやスタッカークレーンなどのマテハン設備が搬送を行います。

この場合、コンベア投入エリアがLOSCにおける中継地点となります。

EWM上では、

WT1
入荷ステージ → コンベア投入エリア

WT2
コンベア投入エリア → 自動倉庫

というように搬送工程が分割されます。

EWMとMFSを連携する案件では非常によく登場するパターンです。


パターン② 出荷ステージングエリアを経由する

出荷工程でもLOSCが利用されることがあります。

例えば次のようなケースです。

保管棚
   ↓
出荷ステージングエリア
   ↓
出荷ステージ

物流センターでは、トラックが到着する前に出荷対象の商品をあらかじめ集めておくことがあります。

このとき利用されるのが出荷ステージングエリアです。

例えば、

  • 同じ配送先の商品を集約する
  • 出荷順に並べる
  • 積み込み準備を行う

といった運用が行われます。

そのため、保管棚から直接出荷ステージへ搬送するのではなく、一度ステージングエリアを経由させる設計になることがあります。


パターン③ 人作業とマテハン設備の受渡し地点を設ける

大規模物流センターでは、

  • 人が搬送するエリア
  • 設備が搬送するエリア

が明確に分かれていることがあります。

例えば、

保管棚
   ↓
設備受渡しポイント
   ↓
高速コンベア
   ↓
出荷エリア

という構成です。

この場合、設備受渡しポイントが重要な中継地点になります。

ここで作業責任が切り替わるため、

  • フォークリフト作業はここまで
  • コンベア搬送はここから

という管理が可能になります。

また、MFS連携案件では、

「どこまでがEWMの責任範囲か」

「どこから設備制御側の責任範囲か」

を整理する意味でも重要なポイントになります。


パターン④ 建屋間・フロア間搬送

物流センターによっては、複数の建屋やフロアにまたがって運用されている場合があります。

例えば、

1階保管エリア
      ↓
搬送エリア
      ↓
エレベーター前
      ↓
3階保管エリア

というようなケースです。

システム上は単純な在庫移動に見えても、現場ではエレベーター搬送や建屋間搬送が発生します。

そのため、

  • エレベーター前待機エリア
  • 建屋間受渡しエリア
  • 搬送ヤード

などを中継地点として設定することがあります。


LOSCの利用シーンに共通する考え方

ここまでいくつかの例を紹介しましたが、どのケースにも共通する考え方があります。

それは、

現場の搬送ルールや設備構成をシステムに反映している

ということです。

EWMだけを見ると、

開始地点
   ↓
最終目的地

というシンプルな搬送で十分に見えるかもしれません。

しかし実際の物流センターでは、

  • マテハン設備との受渡し
  • 作業エリアの分担
  • 出荷準備のための集約
  • 建屋やフロアをまたぐ搬送

など、様々な制約があります。

LOSCは、そのような現場都合をEWM上で表現するための機能です。

そのため設定を考える際は、

「どの保管タイプを経由させるか」

だけではなく、

「なぜその場所を経由する必要があるのか」

という現場視点を持つことが非常に重要になります。

LOSCとPOSCの違い

LOSCを学び始めると、多くの人が一度は疑問に思うことがあります。

それは、

「LOSCとPOSCって何が違うの?」

という点です。

どちらも搬送経路や作業工程に関係する機能であり、設定画面を見ていても似たような印象を受けるためです。

実際、EWMを学び始めたばかりの頃は、この2つを混同してしまう人も少なくありません。

しかし、両者の目的は大きく異なります。

まずは違いをシンプルに整理してみましょう。

項目LOSCPOSC
正式名称Layout-Oriented Storage ControlProcess-Oriented Storage Control
着眼点場所(レイアウト)作業工程(プロセス)
管理したいものどこを通るか何をするか
代表例中継地点を経由する検品、計量、梱包を行う

一言で表現すると、

LOSCは「どこを通るか」

POSCは「何をするか」

を管理する機能です。

LOSCの考え方

LOSCは倉庫内の搬送ルートに着目します。

例えば、

入荷ステージ
      ↓
コンベア投入エリア
      ↓
自動倉庫

というルートがあった場合、

EWMは「コンベア投入エリアを経由する」というルールを管理します。

重要なのは、途中で何をするかではなく、

どの場所を通るか

です。

そのためLOSCは倉庫レイアウトや設備構成との関係が強い機能と言えます。


POSCの考え方

一方でPOSCは作業工程に着目します。

例えば高価な製品や特殊な製品の場合、

入荷
 ↓
開梱
 ↓
検品
 ↓
計量
 ↓
格納

という工程が必要になることがあります。

この場合、POSCは

  • 開梱する
  • 検品する
  • 計量する

という作業プロセスを管理します。

つまりPOSCが気にしているのは、

どの順番で作業を実施するか

です。


実案件では組み合わせて利用することもある

実際のプロジェクトでは、LOSCとPOSCを組み合わせるケースもあります。

例えば、

入荷
 ↓
検品
 ↓
コンベア投入エリア
 ↓
自動倉庫

という運用があったとします。

この場合、

  • 検品を行う → POSC
  • コンベア投入エリアを経由する → LOSC

という役割分担になります。

つまり両者は競合する機能ではなく、目的が異なる機能なのです。

LOSC設計時に考慮すべきポイント

ここまで説明してきたように、LOSCの仕組みそのものはそれほど複雑ではありません。

実際、設定項目だけを見れば比較的シンプルな部類に入る機能だと思います。

しかし、実案件で本当に難しいのは設定ではなく設計です。

どの中継地点を経由させるのか、なぜそのルートを選ぶのかを十分に検討しなければ、稼働後に思わぬ問題が発生することがあります。

ここでは、私がプロジェクトで重要だと感じているポイントを紹介します。

マテハン設備の制約を理解する

まず大前提として、マテハン設備の制約を理解する必要があります。

例えば、

  • どのコンベアに接続されているのか
  • どの搬送ルートが利用可能なのか
  • どこが設備との受渡しポイントなのか

といった内容です。

EWM上では自由にルートを定義できそうに見えても、実際には設備側の構造によって選択肢が限定されることが少なくありません。

そのため、LOSC設計ではマテハンベンダーとの認識合わせが非常に重要になります。


中継地点のキャパシティを確認する

私が特に重要だと感じているのが、中継地点のキャパシティです。

例えば、

入荷エリア
     ↓
中継地点A
     ↓
自動倉庫

というルートがあったとします。

場所的には最短ルートだったとしても、中継地点Aにパレットを1枚しか置けないのであれば問題になる可能性があります。

通常時は問題なくても、繁忙期や大量入荷時にはパレットが集中し、中継地点で処理しきれなくなるかもしれません。

すると、

  • 中継地点で滞留する
  • 手前のコンベアで滞留する
  • 同じコンベアを利用する別ルートにも影響する

という連鎖的な問題が発生することがあります。

そのため、

一番近いルート = 一番良いルート

とは限らないのです。


Material Flowを確認する

LOSC設計では、個別の搬送ルートだけではなく、倉庫全体のMaterial Flow(マテリアルフロー)を確認することが重要です。

例えば、

  • どのルートに物量が集中するのか
  • ピーク時にはどれだけのパレットが流れるのか
  • 他ルートとの競合は発生しないか

といった観点です。

特に自動倉庫案件では、

EWM担当

マテハン担当

MFS担当

がそれぞれ異なる前提で設計を進めてしまうことがあります。

その結果、

システムとしては正しい

設備としても問題ない

にもかかわらず、

倉庫全体としては期待したスループットが出ない

という状況が発生することがあります。


責任分界点を明確にする

マテハン設備と連携する案件では、責任分界点も重要になります。

例えば、

保管エリア
     ↓
設備受渡しポイント
     ↓
コンベア

という構成の場合、

  • 作業者はどこまで運ぶのか
  • 設備はどこから搬送するのか
  • エラー発生時は誰が対応するのか

を明確にしておく必要があります。

この整理が不十分だと、

「EWMの問題だと思っていたら設備側の問題だった」

あるいはその逆、

という状況になりがちです。


将来の物量増加も考慮する

要件定義やテストでは問題がなくても、稼働後に物量が増加するケースは珍しくありません。

現在の物量だけを基準に設計すると、

将来的にボトルネックが発生する可能性があります。

そのため、

  • 繁忙期の想定
  • 将来の出荷量増加
  • 新しい荷主の追加
  • 設備増設計画

なども確認できると理想的です。

もちろん、すべてを予測することはできません。

しかし、

「今は問題ないから大丈夫」

ではなく、

「将来も問題なく運用できるか」

という視点を持つことは非常に重要です。


LOSC設計は物流設計そのもの

LOSCはEWMの設定機能の一つですが、実際には物流設計の要素が非常に強い機能です。

設定そのものは数時間で終わるかもしれません。

しかし、

  • どのルートを使うのか
  • どこを中継地点にするのか
  • 物量集中時に問題はないか
  • 設備側の制約はないか

といった検討には、多くの時間と関係者との議論が必要になります。

私自身の経験からも、LOSCは設定画面だけを見ていても良い設計はできないと感じています。

現場の運用を理解し、マテハン設備の動きを理解し、その上でEWMに落とし込む。

そのプロセスこそが、LOSC設計の本質だと思います。

LOSC設定の概要

ここまで、LOSCの考え方や設計上のポイントについて説明してきました。

では実際にEWMでは、どのような設定によってLOSCを実現しているのでしょうか。

本記事は設定手順の解説が目的ではありませんので詳細なカスタマイズ画面までは触れませんが、LOSCを構成する主要な考え方を整理しておきます。

LOSC設定の基本的な考え方

LOSCでは、

「どの保管タイプからどの保管タイプへ移動する際に、どこを経由するか」

を定義します。

概念的には次のようなイメージです。

開始保管タイプ
       ↓
経由保管タイプ
       ↓
終了保管タイプ

例えば、

GR
 ↓
CONV
 ↓
ASRS

というルートを定義した場合、

GRからASRSへ搬送する際には必ずCONV(コンベア投入エリア)を経由するようになります。

EWMはこの設定を参照し、必要な倉庫タスクを生成します。


LOSC判定で利用される主な情報

LOSCでは、主に以下の情報を利用して搬送ルートを決定します。

  • Source Storage Type(搬送元保管タイプ)
  • Destination Storage Type(搬送先保管タイプ)
  • Intermediate Storage Type(経由保管タイプ)
  • Identification Point
  • Pick Point
  • Storage Group(必要に応じて)

最も基本的なパターンでは、

搬送元保管タイプ
        ↓
搬送先保管タイプ

の組み合わせによって経由ルートが決定されます。

例えば、

GR → ASRS

の場合はコンベア投入エリアを経由する、

GR → 冷蔵倉庫

の場合は別の受渡しポイントを経由する、

といった形です。


Storage Groupを利用するケース

実案件では、

同じ搬送元・搬送先の組み合わせであっても、異なるルートを利用したい場合があります。

例えば、

GR
 ↓
ASRS

への搬送であっても、

通常パレット
 ↓
CONV-A
 ↓
ASRS

大型パレット
 ↓
CONV-B
 ↓
ASRS

のように搬送ルートを分けたいケースがあります。

このような場合に利用されるのがStorage Groupです。

Storage Groupを追加条件として利用することで、同じ搬送元・搬送先であっても異なるLOSCルートを定義できます。


倉庫タスク生成との関係

LOSCの設定が適用されると、EWMは搬送工程を複数の倉庫タスクに分割します。

例えば、

GR
 ↓
CONV
 ↓
ASRS

というルートの場合、

EWMは概念的に次のようなWTを生成します。

WT1
GR → CONV

WT2
CONV → ASRS

これにより、

  • 設備との受渡し管理
  • 作業責任の分離
  • 搬送進捗の可視化

が可能になります。


設定よりも重要なのは要件整理

ここまで設定の概要を紹介してきましたが、実際のプロジェクトでは設定作業そのものが大きな課題になることはあまりありません。

むしろ重要なのは、

  • なぜその中継地点を経由するのか
  • 他のルートでは駄目なのか
  • 物量集中時にボトルネックにならないか
  • マテハン設備の制約を満たしているか

といった設計上の検討です。

私自身、LOSCの検討では設定書よりも、

  • レイアウト図
  • コンベア図面
  • Material Flow図
  • スループット資料

を見ている時間の方が長いことがよくあります。

それだけLOSCは単なるEWM設定ではなく、物流設計そのものと深く結びついた機能だと言えるでしょう。

まとめ

今回はSAP EWMのLOSC(Layout-Oriented Storage Control)について解説しました。

LOSCは一見すると単純な搬送ルート設定のように見えますが、実際には物流センターのレイアウトやマテハン設備の構成、さらには現場運用そのものと深く関わる重要な機能です。

記事のポイントを振り返ってみましょう。

  • LOSCは倉庫内の搬送経路を制御する機能
  • 「どこを通るか」を定義するのがLOSC
  • 「何をするか」を定義するPOSCとは目的が異なる
  • 自動倉庫やコンベア設備との連携で頻繁に利用される
  • 中継地点の選定はスループットやMaterial Flowに大きな影響を与える
  • 設定そのものよりも物流設計や要件整理が重要

私自身、EWM案件に携わる中で感じるのは、LOSCは単なるシステム設定ではないということです。

システム上は正しいルートであっても、実際の物流現場で十分なスループットが出なければ意味がありません。

そのため、

  • マテハン設備の制約
  • 中継地点のキャパシティ
  • 物流量のピーク
  • Material Flow全体への影響

といった観点を考慮しながら設計することが重要になります。

特に、自動倉庫やMFSと連携するプロジェクトでは、EWMの設定知識だけでなく、物流現場やマテハン設備への理解も求められます。

LOSCはその代表的な機能と言えるでしょう。

本記事ではLOSCの概要や設計上の考え方を中心に解説してきましたが、実際にプロジェクトへ参画すると、

「具体的にどのような設定を行うのか?」

「どの設定項目がLOSCの動作に関係しているのか?」

という点が気になる方も多いと思います。

そこで次回の記事では、

LOSCの具体的な設定方法

について解説する予定です。

  • LOSCのカスタマイズ設定
  • 保管タイプや経由地点の定義方法
  • 倉庫タスクがどのように生成されるのか
  • テスト時に確認すべきポイント

など、実際の設定画面や設計の考え方を交えながら詳しく紹介したいと思います。

LOSCを「なんとなく理解している」状態から、「実際に設定できる」レベルを目指したい方は、ぜひ次回の記事もご覧ください。

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この記事を書いた人

「現場の言葉」と「システムの言葉」をつなぐ。
私のキャリアは通訳から始まりました。SAP導入プロジェクトで通訳兼キーユーザーとして奔走した経験が、私の根底にあります。
その後、クライアント側でキーユーザー・プロセスオーナーとして10年、コンサルタントとして約8年。一貫して物流とSAPに向き合ってきました。単なる机上の空論ではなく、実際にオペレーションを回し、現場で頭を悩ませてきたからこそ見える「本当に使えるEWM」を大切にしています。
EWMだけでなく、WMSやWCS、物理的なマテハン設備も含めた「倉庫全体の最適化」を考えるのが得意です。このブログでは、日本語リソースが少ないEWMのTipsや、実務で培ったナレッジを惜しみなく共有していきます。
趣味は飲食(料理とお酒)と、大好きなヨーロッパやアジアへの海外旅行です。

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